表参道ソフィアクリニック
カルロ・ボルテッリ
無原罪の御宿り
1566年
大きな作品です。
マニエリスムの特徴がよく現れています。つまり、硬い質感の肌、イブの細長く伸びてくねる身体、艶めかしくエロチックなどの特徴です。またこの絵は各パーツが前面に押し出されているように見えるのも特徴的です。そして幾つもの腕と手の伸び方は、均整とアトランダムの両方の兼ね合いであって、インパクトがあります。
主要な人物は上から、父なる神、マリア、イブです。タイトルにある「無原罪の御宿り」はポピュラーなテーマですが、1400年代後半に普及したとのこと。イブは原罪を犯しましたが、マリアは原罪を犯しませんでした。そして「無原罪の御宿り」とは、マリアが原罪を犯さずに父なる神の子を宿した、つまり性の交わりをせずに妊娠したということがテーマになっています。ここでは「無原罪」とはマリアが人間存在の根源にかかわる罪がない無垢の状態であり、「無原罪の御宿り」とは、そのような状態であるから性的な交わりを経ずに神の子を宿すことができたということです。ただ実質的には性の交わりは原罪の一部に組み込まれている可能性が大きいのです。そうするとイブが知恵の木のリンゴを食べるということは、アダムと性的な交わりをするということの比喩表現も兼ねているのだということにもなります。アダムとイブは、性の交わりを行って、二人の息子カインとアベルをもうけたのでした。
アカデミア美術館2019年