表参道ソフィアクリニック
マグリット展
【2016年から2017年のシーズン・ポンピドーセンターにて。2017年1月】
この展覧会は、マグリットの幾つの側面に注目して、マグリットの芸術を描き出そうとするものです。展覧会はいくつかのテーマに分かれています。マグリットのいくつかの重要な側面が理解できます。
絵画領域における新しいものの発明、創作、独創についてです。これはイマージュの新たなアイデアを考案して、絵画に採用することです。マグリットは、より一層積極的にこれを行い、色々なアイテム、メタモルフォーゼを考案しました。
ここでは、パラドクスとは、まず、遠近法や現実の法則に反することです。これによって表現の幅を拡げもします。
さらに下のように言葉とイマージュのパラドクスもあります。これもマグリットの絵画の重要な要素となっています。
言葉で表記したところはimageが消えてしまいます。イマージュと言葉の相反関係です。
これについては若い頃からずっとテーマとされていたようです。
1948年
Ceci n'est pas une pipe.
これはとても有名な作品です。これがイマージュと言葉のパラドクスないしは相反関係です。
これには派生形もあります。つまりリンゴをモチーフにしたものです。
Ceci n'est pas une pomme.
「これはパイプではないということが続いている:イマージュの裏切り」:Ceci continue de ne pas être une pipe.:La trahison des image
・・・これは 1951年の描画の中に書かれています。
1964 Ceci n'est pas une pomme.
1952年 La trahison des image , Encre de Chine sur papier
この作品は版画ではなくて墨(Encre de Chine )によって描かれたものです。小さな作品です。ポンピドーのマグリット展の最後の作品として展示されていました。La trahison des image.つまり「イマージュの裏切り」はマグリットの画業全体の重要な一面を示すものと思われます。イマージュと言葉の相反関係です。
それでも地球はまわる(Pourtant la terre tourne)という言葉にも近いのでしょうか。つまり「それでもこれはパイプではない」というふうです。
1928 - 1929
Le Palais de rideauxⅢ
cielは空という意味です。言葉で表記したところは空のimageが消えてしまいます。そしてその逆も然りです。つまり空のイメージがあるところでは言葉がありません。これもまたイマージュと言葉の相反関係です。そのような考え方を表すベイシックな作品です。
1929,
L'apparition
L'apparitionとは出現のことです。言葉が色々と現れていますが、イメージは何も浮かんでいません。雲、地平、馬、肘掛け椅子、小銃。画風は空疎で陰気です。
1928
Les Charmes du paysage 風景の魅力
Les Charmes du paysageの内実は、paysageという言葉の額縁によって殺されています。この銃はイマージュの殺害を表しています。
1928年に、このようなことが考えられているのは、早いと思われます。
1929
Le Sens propre, 固有の意味
これも「悲しむ女」が、言葉によってそのイマージュが消えています。
1935
La Clef des songes.夢の鍵
言葉とイマージュが食い違っています。既成概念と全く異なっています。
食い違っているほうがむしろマグリットにとっては望ましい、真実のことです。
1955
La Voix de l'absolu
この作品では、言葉が消えているところに、イマージュが現れています。
「宇宙のなかの一輪の●」●は薔薇の絵。
1950
L'Art de la conversation.会話の技術
Amourという言葉が波と同じように曖昧になることで、2羽の白鳥の愛が成立しているようにも見えます。
打ち破られたドア。
無意識についての理屈抜きの表現。理屈を超えています。そのようなタイプの作品があります。
不確実さ(incertitude)としての同一化。つかの間の同一化です。つかの間生じたもの、消えゆくもの、そしてなおかつ、それが永遠と掛け合わされています。
1944
Le Principe d'incertitude, 不確定性原理
これは自分の影が鳥になっています。それは鳥へのつかの間の空想的な同一化です。それは東映でもあります。
Le Principe d'incertitude, 不確定性原理はハイゼンベルクの提唱した概念です。
1928
Les Jours gigantesques,
直訳すると「途方もない日々」ということになります。
これは若い頃の作品ですが、これも同一化が上手く表現されていると思われます。心的外傷となるような出来事への同一化です。それから逃れようにも逃れられません。
1927 - 1928
Le Regards perdu.
直訳すると「失われた眼差し」です。
そしてこの後頭部側に描きこまれている「失われた眼差し」が、脳内に住み着いているかのようですが、これが同一化の一種と思われます。
画像
Les Amants 1928
これもやはり同一化の一種とみなすことができます。
rideauは演じるためのもの。隠したり見せたりするものです。
マグリットにとって、演じることは、絵画表現あるいは自己表現のために重要です。
1960
Les Mémoires d'un saint,
1948
La Mémoire