表参道ソフィアクリニック
レオナルド・ダ・ヴィンチ
1452年4月15日 - 1519年5月2日
レオナルドは1482年から1499年まで、ミラノ公国で活動した。
ミラノ公 ルドヴィーコ・スフォルツァLudovico Maria Sforza
通称イル・モーロ(Il Moro) 。イル・モーロはムーア人のように肌の色が黒かったからだと言われている。
ヴェロッキオ
洗礼
顔をクローズアップしてみますと、目元には眉毛、唇には唇のシワも細かく描かれています。髪の毛も細かいです。
もっとも細密さについては、受胎告知のマリアの方が上です。
受胎告知
天使とマリアの間の間合い。聖なる関係。
マリアの顔をクローズアップしてみますと、目の輪郭や目元のシワ、口唇など細かく丁寧に描かれています。口元の陰影も繊細に描かれています。愛らしい唇です。
マリアの手の描写もとても丁寧で細かいです。
天使の髪の毛も。
マリアの書見台の石の彫刻の細かさも特筆すべきことの一つです。
書物の文字も描かれています。文字はおそらく判読できるのではないでしょうか。
マリアと天使のあいだには、言葉はないと見た方が良いでしょう。無言の対話がここでの特徴の一つでしょう。無言のうちにある奥行きの深さがあります。この無言のうちの奥行きの深さに、背景の神秘と深さがあるようです。
ルーブル所蔵版
ナショナル・ギャラリー所蔵版
金属的なまでに光沢のある肌です。そして肌はコントラストが高すぎます。修復のしかたに問題があるのか、元々こうなのか。マニエリスムの時代にはこのような光沢が特徴的ですが、レオナルドがこんな風に描いたのでしょうか。もしかしてマニエリスムの時代に修復されたのかもしれません。
魅力を欠きます。
ファルスのように多くの岩が乱立しています。
(2018年1月ナショナル・ギャラリー)
『岩窟の聖母』(1495-1497年頃)個人蔵
ロンドン・ナショナルギャラリーやルーブルとは別のもの、個人蔵のものです。修復していてひび割れ、汚れありません。しかし気のせいか若干粗雑な感じもしなくもありませんでした。
画面構成は前景と後景に別れ、前景はピラミッドの調和、後景は岩窟の様子と神的な雰囲気の漂う岩の光景。
各人が違う手の形をしていることにも注目です。なにやらそれぞれの手が物語っているようです。意味があるのでしょうか、でも謎めいたような手の形をしています。それぞれがバラバラの手の形でありながらも、統一性もあるのでしょう。手は口ほどに物を言う、というふうだとしても、その語り口は暗号的です。
周囲の草花もそれぞれ花言葉に引っ掛けているようです。
背景は、ファロスのような岩が目立ちます。凹と凸の関係。ファロスと生成のあいだの関係について。創世、つまり神がこの世を創造したこととも重なっているのでしょう。この岩の凹と凸は、創世の基本原理としても配置されているのでしょうか。誕生の秘密。
聖書物語のなかでは、マリアはvirginですがイエスという子供を産んだとされています。人類で唯一の例外的な方法によって。神によってなされた方法。
The Virgin and Child with St Anne and St John the Baptist, sometimes called The Burlington House Cartoon
La Vierge, l'Enfant Jésus avec sainte Anne et saint Jean Baptiste ou The Burlington House Cartoon
マリアの表情は柔らかく優しく美しいです。永遠の優しさです。アンナの笑顔はそれとは別のようです。その表情は少しドギツイです。そして人差し指を上に向けていますが、これは神を指差し、昇天を暗示しています。
フロイトが指摘する様に、脚はマリアのものかアンナのものかわかりにくいです。もっとも彩色すれば一目瞭然であったでしょう。ただマリアとアンナの密着したポーズからして、変っています。何かしら意味ありげです。一心同体的です。
イエスとヨハネは、アンナの人差し指を頂点としてピラミッド構図を形成しています。イエスは磔刑により昇天しますが、ヨハネはヘロデ王に斬首され昇天します。アンナが人差し指を立てているのは二人とも天に召される運命にあることを暗示しています。アンナの表情は悪魔的でさえあります。
薄塗りによって緻密で繊細。他のイタリア絵画と比べても特に繊細です。そしてまた深遠。
背景は北方絵画の影響が大きそう。イタリアに北方絵画がはいって大分たつのですが。
黒色は煤(すす)から採ったようで、真っ黒をよく効かせてあります。そして陰影のコントラストはかなり強調されています。
また皮膚の質感は、硬質でさえあって、マニエリスムの先駆けであるようにも見えます。
人物の部分と背景の部分は、違っていて全体にちぐはぐな感じもします。
Louvre 2020