表参道ソフィアクリニック
・主に19世紀前半に活躍した画家です。19世紀後半に印象派などの新潮流が現れましたが、その前哨戦となっています。
・遠くから離れた方がよりまとまっていて、良さがわかりやすいかも知れません。
・名人芸です。とくに自然の描写が優れています。けぶっているのが特徴的。しかしそれに対して鮮明なものの描写の仕方としては、タッチの荒さを利用しています。
・大胆で大幅な省略法を用いています。
・光の効果を重視しています。
・光と空気の効果。
・柔らかい描写です。
・現実/非現実。
・穏やかさ/荒々しさ(猛威)
・人間の歴史を自然と対比することによって、大きいパースペクティブでみています。
古典的で写実的な絵画
初期にはやはり古典的な作品を制作していました。
以下はナショナルギャラリーに展示されているターナーの作品です。主要な4点をここであげておきます。この4点だけでもターナーの作品を知るのに結構十分な感じさえします。
初期のターナーの作品も参考になります。ターナーのイメージからすると意外なところもあるのですが、ターナーは古典的で写実的な絵を描いていました。当然と言えば当然です。それがどうしたことか後世の印象派のような画風になったのでした。当時ならこんな絵画など通用しないはずなのですが、画壇の重鎮だったから、なんとか受け入れられたのでしょうか。
(写真は全て2018年1月に自分で撮影したものです)
Duech Boats in a Gale, 1801.
ターナー初期のスタンダード技法の大型にして代表作の一つ。
波のうねり、船の傾斜、しぶきなどの描写がとりわけ巧みです。海をよく観察もしたのでしょう。明暗の対比、力動と静けさの対比、荒れと穏やかさの対比。
National gallery, 2020.1
クロード・ロランと似たスタイルです。そのタイプのものとしてはとてもよく出来たものだと思います。乱雑なところがクロード・ロランと違います。混沌がターナーの特徴であろうかと思われます。混沌の度合いが高いです。クロード・ロランは整っている感じです。それと、ターナーのほうが、光がより強い、光の強度がより強く、コントラストが高い、また、靄がより多いです。
ターナーの初期の作品なので、細かく描き込まれて、伝統的な技法に則ったクラシックな絵画です。クロード・ロランは17世紀中葉に活躍しました。ターナーは19世紀前半です。150年以上の違いがあります。
National gallery. 2020.1
歴史画であり、古代を描いているらしいことはわかるのですが、それ以上のことは詳細は全くわかりません。古代とは誠に神秘的であり、光を与えるものと、生命を呑み込む靄がかかったような闇があり、暗中模索の中を進んでいくのです。神の姿は見えそうにはありませんが、神秘的な世界です。古代の歴史的世界の存在意義を描ききっています。
National gallery, 2020.1.
ターナが描く光の真骨頂の一つです。鮮烈な現実の光は流麗です。
黒色をポイントとしてコントラストを高めています。
(The Metropolitan Museum of Art, 2018)
絵画史の中で、それまでにはない新しい方向性を示す作品。明るい陽光。そしてロマン主義的でもあります。
メトロポリタン美術館展 国立新美術館 2022年2月~
波しぶきが上がって、海が荒れているかのようです。鯨の黒のコントラストが高く、それが動的であり、鮮烈な場面を構成して描いています。。体験の印象を描いているかのような、しかしあるいは物語などから空想したのでしょうか。
(The Metropolitan Museum of Art, 2018)
以下からは年代順に並べたものです。
TATE BRITAIN, 2020
TATE, 2020
TATE, 2020
神的なものの大いなる力による自然の脅威。これは人知を超えて破壊的です。
1835年頃 ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・ サルーテ聖堂の前廊から望む
カラッとした空気と湿った空気が重なっているようです。
独特な光の感覚です。
2022年春メトロポリタン美術館展 国立新美術館