表参道ソフィアクリニック
堅実な勤め人といった雰囲気の人物像です。しかし、そのような雰囲気の人でも、なぜかしら絵を描くのです。描くのはいつもこのような絵です。いつも描いている自宅の空疎な室内、空疎なドア、そしてドアの向こう側には何があるのでしょうか、やはり空疎のようです。しかし外部に開かれた窓があり、それは神秘的でもあります。あの世にも開かれているような窓です。これらは全て彼の心の中の重要な有様を表現しています。彼の表情は幸せには見えません。明るい気持ちの良い感情は全く感じられず、はっきりした悲しみも表してもおらず、感情が鈍磨したような風に見えます。しかし顔面には、内部に何かが充満して内側から圧力がかかっているかの様です。それら全体が彼の存在のあり様、心の生活のありよう、変わりようのないなにかを表現しています。この手の仕草はなんなのでしょうか。何かにすがるかの様に、欲している様にも見えますし、ドアをノックしようとしている様にも見えます。実は絵筆を取っているだけなのですが、その様にも見えるのです。背景のドアとドアノブは美しく硬質で堅実に描かれています。このドアノブだけはことさら明瞭に描かれていて、向こう側の世界に行くための重要な何かが暗示されている様です。
(The Metropolitan Museum of Art, 2018)
神々しい光が窓の格子を縁取っています。これは硬質な質感があり、光は床の上に投げかけられています。神秘的です。ドアも何かを暗示している様です。壁もです。これらはどうも霊的なニュアンスがにじんでいます。硬質でカチッとした描きぶりが神々しく霊的な神秘性を引き出してきています。
(The Metropolitan Museum of Art, 2018)