表参道ソフィアクリニック
ロレンツォ・ギベルティ
Lorenzo Ghiberti
1381年頃 - 1455年12月1日
フィレンツェ、サン・ジョヴァンニ洗礼堂『天国への門』にある肖像
サン・ジョヴァンニ(聖ヨハネ)は、フィレンツェの守護聖人です。
中世11世紀に起工されました。ロマネスク様式です(つまりゴチック様式の前です)。またビザンチン様式にみられる八角形になっています。洗礼者ヨハネにちなんだ教会です。フィレンツェでうまれた人々は全てここで洗礼を受けたとのこと。ダンテはフィレンツェの人のことを「うるわしのサン・ジョヴァンニ洗礼堂で洗礼を受けし者」と呼んでいます。
南門は、アンドレア・ピサーノの1330年の原案に基づいて鋳造されました。縁取りのフリーズはギヴェルティの父親の作品です。上部のフリーズはサロメの物語であり、16世紀に付け加えらえたものです。
1401年のコンテスト
ギヴェルティとブルネレスキの作品の比較です。これはバルジェッロ美術館にて隣り合わせで展示されていました。実物はそれとなく置かれていて、正直あまり目を引くような存在感はありませんでした。これをみてとりわけ感動するようなものではありませんでした。
ギヴェルティ
斜めのS字状によって画面を区切っている。止めに入る天使には短縮法が用いられていて、動きを強調しています。平面的でです。全体に美しく優美でゆとりのある世界。神の世界。さらりと軽く美しいとも言えるかもしれません。人物も含めて、全体に優美な装飾性がみられます。天上的な優美さが全体の特徴でしょう。
ブルネレスキ
前面の人々と馬が立体的で前面に出てきていることなど、より凹凸が大きく、画面全体が立体的、三次元的になっています。ゴツゴツしているとも言えるかもしれません。この鋳造は技術的に大変困難であり、ブルネレスキは困難な技術の克服も目指しました。またこの人々はより現実的な生活を営んでいることから、この作品の現実描写の傾向をみせています。イサクは息子ヤコブの首を締め上げ、刃物を喉に突きつけ、今にも殺そうとしています。息子ヤコブはこの画面の中央に位置していて、体を無理な姿勢で大きく拗らせ、恐怖に支配されています。天使はすんでのところでイサクの腕を掴み、止めに入り、イサクは天使の方を見ています。動きの激しい役者のようでもあります。総じて、生々しく、濃厚に、ギヴェルティよりもいささか泥臭いくらいに、ドラマティックに描いています。
美しく優美な天上的なヴィジョンと生々しい現実というヴィジョン、このふたつヴィジョンがフィレンツェの芸術には併存していたと考えられますが、このコンテストはその先駆けであったとも考えられます。
上のギベルティとブルネネレスキの優劣については、よくわかりません。
しかし、ドゥオーモ付属美術館内に展示されているギベルティの門扉の実物を見ると、ギベルティを選んで正解だったのではないかと思います。この実物は修復されたものでしょう。金が綺麗に押されています。
またサン・ジョヴァンニ聖堂に取り付けられているギヴェルティの門扉はレプリカです。レプリカも綺麗ですが、本物はより精彩に富んでいるように思われました。
1403-24
GHIBERTI, Lorenzo
North Doors (Life of Christ)
Gilded bronze, 457 x 251 cm
Baptistery, Florence
コンテストで選ばれて、20年以上かけて制作されました。
GHIBERTI, Lorenzo
Eastern Door of the Baptistery
Bronze with gilding, 599 x 462 cm
Baptistry, Florence
これに至っては25年以上の年月が費やされています。
とても見ごたえのある作品でした。
マザッチオなどにより遠近法が絵画に採り入れられ、遠近法が急速に発展しました。そしてギベルティも遠近法を採り入れました。拡がりがあり、また優美な美しさと卓越した表現となっています。前作よりもずっと見栄えがし、格段に進歩したように見えます。ミケランジェロはこれをみて「天国の門」と呼びました。