表参道ソフィアクリニック
展示されているものは、オリジナル画の翌年に制作された、2分の1の大きさの複製画です。オリジナル画は縦2.77 m、横1.94 mの巨大なものです。ルイ14世が気に入った一枚でした。しかし、この複製画は一見して絵画としてはすごくいい出来栄えというわけではありません。特に顔の描写がよくありません。見るならばこのオリジナルでしょう。
63歳のルイ14世です。ルイ14世はこれだけ分厚く大きな生地と毛皮(おそらく高級な白貂(シロテン))でできた王のコスチュームを纏っていながらも、白いタイツの足を見せて、赤色がポイントのおしゃれな靴を履いています。これはダンスのいでたちです。クラシックダンス、つまりバレエです。ルイ14世は幼少期からダンスのレッスンを受け、ダンスを奨励し、自ら舞台にも乗り、「踊る王」と呼ばれました。パリ・オペラ座バレエ団の起源となる王立音楽アカデミーを創設(1661)し、フランスでのバレエの隆盛を作りました。今ではバレエ用語はどの国でもフランス語を用いられますが、それはこの時期に起源があるといってもいいでしょう。ルイ14世の足が小さいのは、きついダンスシューズを履いているため足が小さくなってしまったというのが王侯貴族のおしゃれであったためであり、これ以降貴族の男性の足が小さいことが美しいとされたのでした。因みにこの脚の配置は、4番ポジション(4ème position)ということになるでしょう。またルイ14世は垂直にジャンプして脚を入れ替えて打って元に戻ることができない、つまりアントルシャ・キャトル(quatre)ができなかったので、その代わりに、前で打って後ろに入れ替えるというキャトルよりも簡単な方法を行なっていたので、それをロワイヤルroyalと呼ばれるようになりました。もっともロワイヤルも特有の優雅な美しさがあります。
また、王の衣装には、フランス王家(ブルボン朝)の象徴である百合の紋章がたくさん描かれていて、絶対主義的な権威が強調されています。
そして、腰にはとても大きな剣を帯びています。左手には全軍の総司令官を示す指揮棒を持っています。ルイ14世は拡張主義的であり、近隣諸国にしばしば戦争をしかけました。彼は好戦的な王でした。
また日常生活においても絶対的な王を演じる役者でもあったルイ14世らしく、まことに素晴らしい演劇空間です。
このバレエと剣と絶対主義の取り合せが印象的です。ルイ14世は面白い王様です。
また『王は踊る』(Le Roi danse)2001年というフランス映画があります。
太陽王に扮した若きルイ14世。