表参道ソフィアクリニック
1877-1968
キース・ヴァン・ドンゲン
Kees Van Dongen
エコール・ド・パリの画家の一人ともされることがありますが、その後、フォービズムへと移りました。
オランダ出身。
ロッテルダムの美術アカデミーに学び、1899年(22歳)からモンマルトルに住み画家として活動しました。当初は社会の底辺の人たちを題材に社会はリアリズムの絵を描いていました。当時の新印象派に関心を抱き、ロートレック風の画風でした。しかし、軍隊、教会そして資本家などの風刺的なイメージの絵も描いていたために、告発を受けましたこともありました。
1905年のサロン・ドートンヌあたりから作風がフォーヴィズムに傾き、その後フォーヴィズムとされる作品群を制作しました。
とりわけ女性像はこの画家の最重要なテーマです。
第一次大戦終結後の1920年代のles anée follesに特に活躍の機会が増えて、社交界との交流から、肖像画家として多くの注文を受けるようになり、また1926年にはレジオンドヌール勲章を受章しました。
キース・ヴァン・ドンゲン展 パナソニック汐留美術館 2022年
1905年 私の子供とその母
妻と娘を描いています。一人目の子供は生まれてからすぐに亡くなりました。この娘はこの絵を描いた年に生まれています。この作品を描いた頃は、画家がフォービズムに傾いていた頃の作品です。
60-70号くらいの大きさ。割と大きく感じられます。平面的な構成となっています。色彩は落ち着きと強さの両方が見られます。赤色のクロワソニズム(輪郭線)にも愛情が認められます。
キース・ヴァン・ドンゲン展 パナソニック汐留美術館 2022年
1906-09 森 または ブーローニュの森
小品です。すっかりフォーヴィズム的な作品となっています。下のパリジェンヌ または 美の小径もそれに近いです。ほとんどペアにもなるような作品であり、隣り合わせに展示されていました。
キース・ヴァン・ドンゲン展 パナソニック汐留美術館 2022年
1907-1909年頃 パリジェンヌ または 美の小径
わりと小品です。とても強い色彩で、コッテリと塗ってあります。重厚な色鮮やかさであり、また軽妙でもあります。このころにはすっかり上流階級の女性たちを描くようになり、おしゃれでセンスが良くて、デザイン的な構成になっています。
キース・ヴァン・ドンゲン展 パナソニック汐留美術館 2022年
1907-1910
パリジェンヌ または モンマルトルのパリジェンヌ
ドンゲンは舞踏会、ミュージックホール、パーティなどに足繁く出入りをしていました。そこの女性をモデルとして女性像を描くこともありました。
上半身は赤色のクロワソニズム、スカートは黒色のクロワソニズムです。
高慢で、扇情的、少し哀しげです。
全体に、とてもいい作品の一つです。
キース・ヴァン・ドンゲン展 パナソニック汐留美術館 2022年
1910 中国の花瓶
厚塗りで、大きな筆触です。筆触は雑にさえ見えますが、全体として印象的です。
Bunkamuraポーラ美術館展2021年
とても見栄えのする大きな作品です。額縁も大きく彫刻が施されて絵が見栄えがするように役立っています。もの凄い絵の具の盛り上げ方です。
キース・ヴァン・ドンゲン展 パナソニック汐留美術館 2022年
灰色の服の女 1911年
省略法をふんだんに用いています。ナイフを使って大胆に厚塗りをしています。
Bunkamuraポーラ美術館展2021年
1914 楽しみ
よく出来た完成度の高い作品です。
落ち着いていて、渋みがありながらも、暖かい色彩です。
緑色の輪郭クロワソニズムです。
おしゃれで高級感のある女性の装い。この女性は縦にずいぶん引き延ばされています。マニエリスムと関係があるのかも知れませんが、それ以上に新しい洗練されたファッショナブルな女性的感性を表しています。
タイトルの「楽しみ」とは、そういった女性の楽しみを表現しているのかと思われます。
左上の絵は前年のエジプト旅行の絵とのことです。
キース・ヴァン・ドンゲン展 パナソニック汐留美術館 2022年
les anées folles はデコの時代でもあります。見事にこの時代を描いています。新しい時代に相応しいモダンでファッショナブルで、色鮮やかで、攻撃的で、そういった時代の光景を、ドンゲンは、既成の概念の囚われない新しい気風に相応しい描き方で描いています。その時代をよく表す描写です。
1920-1925 女曲馬師(または エドメ・デイヴィス嬢) 150号くらい
人物画の大作です。赤、青、黄緑を効果的に魅力的に配しています。グラデーションを作るという歯層はもはやあまりありません。
獰猛な動物的な目をしています。
配色も既成の概念に囚われていないようです。
キース・ヴァン・ドンゲン展 パナソニック汐留美術館 2022年
1926年 ドゥルイイー指揮官夫人の肖像
これも大作の人物画です。黄色いドレスを着て、細く伸びている身体。そして黄色と緑色の組み合わせが印象的です。
上流階級の女性をシックでエレガントに描いています。
キース・ヴァン・ドンゲン展 パナソニック汐留美術館 2022年