表参道ソフィアクリニック
マザッチオとマゾリーニ 聖アンナ・メッテルツァ ガイドp49
・マゾリーニと若きマザッチオの共同制作の作品です。両者はのちにブランカッチ礼拝堂でも共同制作をしました。聖アンナは、マゾリーニが描き、聖マリアはマザッチオが描いたという通説があります。
・マリア、アンナ、イエスの表情がそれぞれ大分違います。
・この三者の表情の違いは何を意味しているのでしょうか。
・聖なる感じがあまりしません。一概に聖なる人たちのようには見えません。
・厳格というか厳しく冷酷なくらいの印象さえ受けます。
・この厳しさ、冷酷さはサンタ・マリア・ノヴェッラのマザッチオ作品『三位一体』にも通じるものがあるかもしれません。
・動きが少ない。香炉を振る天使には動きが見られます。
・総じて初期ルネサンスというところでしょうか。
・慈愛よりも、威厳、威信を示すものでもあるでしょう。
・メッテルツァとはいつもの3人という意味だそうです。(ガイドより)
1424 – 25年
三位一体 サンタ・マリア・ノベッラ教会にて
聖堂正面に向かって右、少し後ろ側の壁に描かれています。
下にはアダムの遺骸とされている骸骨が描かれています。イエスはアダムの根源的な罪を贖うという構想なのでしょう。
イエスの背後の上方には、厳しく冷徹な表情をした父なる神がいます。
この父なる神の表情には人間味が感じられません。恐ろしい神、裁きの神であり、絶対の裁きをおこなう神です。この表情がこの壁画の中心でしょう。
イエスも厳しい悲痛な表情です。
精霊である鳩が放射状の金によって祝福を与えています。
父なる神の厳しい表情の顔は、遠近法によるドームの表現と効果的に対応しているようです。
足元にいるのは聖母と洗礼者ヨハネとのこと。下の両脇は注文主とのこと。
2019.5
落ち着く雰囲気の教会です。
この教会のブランカッチ礼拝堂にマザッチオの作品があります。
ブランカッチ礼拝堂に通じる中庭。
壁画の全体像
壁画の概観
向かって左壁
正面
向かって右の壁
フレスコ画
ペテロの生涯を描いているところが面白いです。同じ画面にペテロが二人描かれていることもあります。
修復前と修復後
1480年にフィリッポ・リッピが完成させた。
『楽園追放』(1426年 - 1427年) サンタ・マリア・デル・カルミネ大聖堂ブランカッチ礼拝堂(フィレンツェ) 左が修復前、右が1980年代に行われた修復後の画像で、後年になって付け加えられた股間の葉が除去されています。
なるひど修復によって綺麗になっていますが、修復前の方が表現がよりシャープに引き締まっているように思われます。
上段の『原罪』はマゾリーノが描いたものです。これも『楽園追放』と対になっています。『楽園追放』の法はマザッチオが描きました。大分、画風が異なります。マゾリーニのほうはアダムとイブが超然として人間性に少なく、マザッチオのほうは、悲しみと恥ずかしさと絶望とで顔を覆い、人間的です。
「牢獄の聖ペテロを訪問する聖パオロ」
フィリッピーノ・リッピ 筆。
ペテロが牢獄に入れられています。そこに聖パオロが訪問してきます。
天使に誘われてペテロが牢獄から出されます。これはペテロが牢獄に入っているのと対になっています。これもフィリピーの・リッピが描いたものです。
1482-1485
貢の銭(1420年代) サンタ・マリア・デル・カルミネ大聖堂ブランカッチ礼拝堂(フィレンツェ)
マザッチオ
聖ペテロ伝のひとつ。このシリーズのなかで最も有名なものです。ペテロは3人描かれていて、イエスの言葉を聴くペテロ、魚の口から銀貨を取り出すペテロ、徴税人に金貨を渡すペテロです。ペテロは一連の動作をイエスに言われるがままに行います。彼はイエスの指示通りに従って行うのです。しかし彼の意見では徴税人にお金を渡すことはないというものでした。あくまでイエスが中心であり、それをめぐってペテロが動いています。
また遠近法の消失点は、建物のラインから線を引くと、イエスの頭部にあります。
ペテロはイエスを三度否認してイエスの予言通りイエスを裏切りました。しかし初代教皇として重要な人物です。
『マタイによる福音書』に書かれたペトロのエピソード。これをもとに描かれています。
24節 一行がカファルナウムに来たとき、神殿税を集める者たちがペトロのところに来て、「あなたたちの先生は神殿税を納めないのか」と言った。
25節 ペトロは、「納めます」と言った。そして家に入ると、イエスの方から言いだされた。「シモン、あなたはどう思うか。地上の王は、税や貢ぎ物をだれから取り立てるのか。自分の子供たちからか、それともほかの人々からか。」
26節 ペトロが「ほかの人々からです」と答えると、イエスは言われた。「では、子供たちは納めなくてよいわけだ。
27節 しかし、彼らをつまずかせないようにしよう。湖に行って釣りをしなさい。最初に釣れた魚を取って口を開けると、銀貨が一枚見つかるはずだ。それを取って、わたしとあなたの分として納めなさい。」
— 『マタイによる福音書』 17章24節から27節
「聖ペテロの説法」 マゾリーノ
1424-25
「自身の影で癒す聖ピエトロ」マザッチョ
「人々は病人を大通りに運び出し、担架や床に寝かせた。ペトロが通りかかるとき、せめてその影だけでも病人のだれかにかかるようにした。」(『新共同訳』使徒言行録 5章 15節)
「聖ペテロのテオフィルスの洗礼」マザッチョ
「ペトロの言葉を受け入れた人々は洗礼を受け、その日に三千人ほどが仲間に加わった。」(『新共同訳』使徒言行録 2章 41節)
後ろにいる男は、いかにも寒そうです。
「テオフィルスの息子の蘇生と教座の聖ペテロ」 マザッチョ/後のフィリッピーノ・リッピ
イエスと同様なくらいにペテロも奇跡を起こすことができます。彼は少年を蘇生させました。イエスによって、またキリスト教の信仰によって、ペテロはイエス並みの超人的な能力を獲得したのでした。ペテロはイエスの指示に従う立場ではなくて、いまやイエスからは自立して、自らの意思で行動し、奇跡を自由自在に起こすことができるようになっています。これによって彼はイエスの後継者であるということを示してもいるわけです。ただ創始者のイエスのようなシャープさはなく、後継者としての二番煎じであり、イエスの真似事のようなことをしています。また、このように彼の似姿を布に描いて壁に貼り付け、人々がこれを崇拝していて、ペテロの権威の高まりを描いています。これは偶像崇拝の典型です。もっとも、イエスの磔刑図のような象徴的な偶像崇拝ではなくて、数段レベルの落ちるカリカチュアのような偶像崇拝です。
13世紀成立のヤコブス・デ・ウォラギネの『黄金伝説』の「44 聖ペテロの教座制定」の中のアンティオキアでの話がモチーフになっている。アンティオキアとは、現トルコ南部の、シリアとの国境近くの町である。ペテロがアンティオキア総督の息子で14歳で死んだ者を墓から蘇らせたこと、そのため、アンティオキアの全住民がキリスト教を信仰するようになり、教会を建て、誰もがペテロを見、説教が聞けるようにと、法座を用意し、ペテロは7年間その座についていた、という話である。
右側にアンティオキアでのペテロの偶像崇拝が描かれている。これもまた異時同時図法です。
「共有財産の分配とアナニヤの死」マザッチョ
「使徒言行録」4章32~37節、5章1~17節の話がモチーフである。信者たちは持ち物をすべて共有していた。土地や家を売った代金はすべて使徒たちに渡され、必要に応じて皆に分配されていた。ところが、アナニアという男は土地を売った代金の一部しか渡さなかった。ペテロが、「神を欺いたのだ。」(『新共同訳』使徒言行録 5章4節)と言うと、アナニアは倒れて死んだ。
「足萎の治療とタバタの蘇生」 マゾリーノ
ここでもペテロは二人描かれています。
魔術師シモンと論議 十字架刑の聖ペテロ」フィリッピーノ・リッピ