表参道ソフィアクリニック
フェリペ2世の宮廷画家
王女イサベル(1566 - 1633)はスペインの黄金時代と呼ばれるフェリペ2世の娘です。手にしているカメオは父親のフェリペ2世の肖像が描かれています。贅を尽くされた衣装と宝飾が細密に描写されて、リアリティあり、優れた描写力です。大変見ごたえのある作品になっています。
王女イザベルの父親フェリペ2世は大帝国を作り上げたカール5世の後継であり、スペイン王国の覇権を押しすすめました。彼は強力な軍隊を持ち、新大陸、北方(今のオランダ、ベルギーあたり)、イタリア、地中海での領土支配や貿易により繁栄し、スペインの黄金時代を作り上げました。イザベルは結婚先がなかなか決まらず、父親フェリペ2世が1598年に死去するまでそばで補佐役をしていました。フェリペ2世はこの王女イザベルを含めて娘たちをとても大切にしていたようです。
フェリペ2世が治めるスペインは「太陽の沈まぬ国」とも呼ばれましたが、1588年にイングランドに無敵艦隊が大敗北を喫してからは衰退への道を歩み始めます。衰退のペースはかなり早かったようです。王女イザベラのこの肖像は、スペインの最も豊かで盛んだった頃に描かれました。スペインの黄金時代の豪華絢爛、強大な王に大切に育てられてきたという雰囲気が溢れる絵です。この作品はフェリペ2世が自分の宮廷画家に描かせたものです。王女が20歳前後の頃です。
緻密で、全体に硬い描写ですが、細密でもあり、整っています。とても王侯らしい風格です。気位も高く、また気品もあります。
ちなみに、フェリペ2世以降は有能な君主に恵まれませんでした。フェリペ3世 ー フェリペ4世 ー カルロス2世と世代が下るに従って、スペインは衰退の一途をとどります。
国立西洋美術館 プラド美術館展 2018年