表参道ソフィアクリニック
とても印象的な風貌のスペイン王カルロス2世像です。生々しいくらい個性的で少し変わった感じがします。こうした異様な感じのするくらいのスペイン王の風貌を我々に伝えてくれる貴重な一品です。大きく黒い瞳、そして紅い唇は両性的です。そして彼は健康的には見えません。表情、甲冑、脚部の描写は良いのですが、まるでこの画家は手を描くのが苦手かのごとくに、スフマートもどきで手を大きくぼかして誤魔化しているよう。これでもおそらく実際のカルロス2世を理想化している描いている肖像画です。
カルロス2世は先端肥大症を患っていたらしくそのために顎が突出していました。また先端肥大症は手指の変形も伴うため、この絵では、手を意図的にぼやかしているかもしれません。彼は病弱であり、近年では近親結婚の繰り返しによって弱い血筋になっていったとも言われていますが、当時は呪いをかけられからだと噂され、本人自身がそれを疑っていたと言います。彼は知的障害があり、癲癇(てんかん)も持っていたとされています。彼は為政者としての統治能力はありませんでした。当時は隣国のフランスではルイ14世が強大な権力を築き上げていた時代です。弱肉強食的な国際情勢のなかにあって、衰退するスペインの国力では、彼は指導力を発揮出来る訳がありませし、実権は母親が握っていました。しかしこんな王にしては、何故かしらいくつも肖像画が残されています。
これまでウィーンのハプスブルク家とマドリッドの王の間では近親同士の婚姻が繰り返され、関係が維持されましたが、1700年に脆弱なカルロス2世が没すると、スペイン継承戦争が仏墺を中心に発生し、また英仏の植民地争いも激化するさなかで、スペイン系ハプスブルクは断絶しました。カルロス2世は衰退するスペインの象徴的な王となりました。
彼の父親はフェリペ4世であり、スペインの絵画はベラスケス、ムリーリョ、リベーラ、ルーベンスなどが活躍した時代であり、彼は文化、芸術の保護に熱心で、スペインの黄金時代と呼ばれるほどでした。人柄が良くて人々の信望を集めた王でした。しかし、フェリペ4世は政権の運用能力に力を発揮せず、スペイン王国の衰退への道をさらに進ませたのでした。
東京都美術館 プラド美術館展 2018年