表参道ソフィアクリニック
venus à sa toilette
キリスト教による精神の一元的支配から脱しています。フランソワ1世(1494年9月12日 - 1547年3月31日)は愛妾を持ちました。
これは神話の世界です。性の饗宴の世界(それは生の饗宴の世界でもあります)。愛と性の世界。自由な世界。性の自由があります。
今は亡きフランソワ1世の望んだ世界が受け継がれているのでしょうか。この作品はフォンテンブロー派らしい雰囲気があります。フランスの優雅な宮廷文化の形成の好み、趣味が表現されているようです。
神聖ローマ帝国のハプスブルク家のカール5世とフランソワ1世は宿命のライバルでもありましたが、文化的にはかなり違ったものでした。ローマ・カトリックを守護しつつ世俗の政治に携わる神聖ローマ皇帝は伝統的に堅実派であるのに対して、それに対抗するフランソワ1世は(フランスもカトリック教国ですが)自由な文化を形成しました。ちなみに神聖ローマ皇帝は愛妾を持たないことになっていました。.(ルーブル2017年12月)
Gabrielle d'Estrées et une de ses sœurs,
フォンテンヌブロー派のなかでとくに有名な作品の一つです。なぜ乳首をつまんでいるのでしょうか。なぜ指輪をつまんでいるのでしょうか。このような手でつまむ二つの仕草は対応しています。また乳首と指輪の関係はあるのでしょうか。これらについては解りません。
ふたりは同じような人物像として描かれています。双生児的であり、真、口、耳などほぼ同じような顔であり、体型も似ています。また、なぜ同じ湯船につかっているのでしょうか。あわかりにくすぎる状況描写です。
この画家の資質であろうと思われるのですが、ガブリエル・デストレの他の肖像画より、この肖像画のほうが暗示的に描かれています。そしてよりクオリティーも高いです。.(2015年1月ルーブルにて)
同性愛的ニュアンスがあるのでしょうか。同族関係にあります(実際の血族関係という意味だけではなく)。つまり二人は似た者同士、似たような人間です。ただしどちらに優劣があるのでしょうか。乳首をつまむのには何の意味があるのでしょうか。乳首をつまむことと、指輪をつまむことは照応していますが、それには何の意味があるのでしょうか。
顔の表情などの肌の陰影のグラデーションが巧みです。
(ルーブル2017年12月)
身につけているものは耳飾りだけです。同じ形の耳飾りはペアになっています。あるいは、一対の耳飾りを二人で分け合うようにして、身につけているのかもしれません。
似たアイテム。
ルビーらしき石が入った金の指輪をつまんでいます。そして乳首をつまんでいます。何故乳首をつまむのでしょうか。そして、指輪をつまむのと乳首をつまむのとが同じ仕草になっています。何か神秘的なまでの同一性があります。このように似た形になっているのは、ダリが特別な意味をもたせた「形態的こだま」も思わせます。また指輪は「男」を暗示させるようにも思われます。
そして何故一緒に入浴しているのでしょうか。
この二人は、似た者同士(samblable)です。とても似ています。二人は、同じ起源を共有していると考えられます。同じような特性、性質を持ちます。すなわち、同根です。それであるから、二人は一緒に入浴しているように思われます。
そしてこのsamblableとは同性愛的傾向を有しています。当時のとらわれのない自由な宮廷の気風が見られるように思われます。
背景には、赤く燃え盛る暖炉の火の前で、女性がうつむいて何か手作業をしていますが彼女は何をしているのでしょうか、何の関係があるのでしょうか、何故それとなく配置しているのでしょうか。
意味不明のアレゴリーがあるかもしれません。
数年前に来日した作品で似たようなものもあります。見応えのある作品でした。しかし、それでもやはり、上の作品の方が優れていると思います。
こういう作品もあったのですね。クオリティは低めです。
Henri IV et sa maîtresse Gabrielle d'Estrées vers 1599
アンリ4と並んで描かれた作品です。ガブリエル・デストレがどのような風貌であったのかをうかがい知ることができます。彼女は既婚でありながら21歳でアンリ4の愛妾maitresseになり、3人の子供をもうけ、人目をはばからぬ振る舞いだったようです。またアンリ4の政治にも意見をしたりして関与していたといいます。彼は彼女を正式の妻にしようとしましたが、彼女は28歳頃に病気で早世しました。その後、アンリ4はマリー・ド・メディシスと結婚しています。マリー・ド・メディシスも政治への関与は大きかったです。(2015年ルーブル)