表参道ソフィアクリニック
1834年 - 1917年
エドガー・ドガ
1857 - 1867
Portrait de famille, Bellelli
【2017年オルセー美術館にて】
中流くらいの家庭です。
この女性は妻(母親)でしょうか。謹厳実直な妻にして母親のようです。父親は娘を、そして娘の心を、娘の容姿を、そして娘の将来を見ているようです。
娘の二重性も表しているようです。母親の謹厳実直、父親の自由でくだけた雰囲気。
二人の娘は、目が明るく聡明で、真面目であるとともに、情感が自由に解放されています。また、娘二人の性格は異なっているようです。向かって左側の娘は、母親に似た性質であり、向かって右側の娘は、父親に似た性質であると考えれます。構図もきっとそのようになっているのでしょう。
二人の娘は父親母親の気質を受け継ぎつつ、どちらかに傾いているということのようです。父親側と母親側があるのでしょう。
フランスの伝統芸能であるバレエの練習光景です。「フランスの伝統芸能」という言い方をしましたが、バレエ用語はフランス語が世界共通です。絶対的君主である太陽王ルイ14世の頃から王自身がバレエに熱心で「踊る王」と言われていたくらいで、この時代に遡ることができます。この先生は棒を持っています。youtubeには「パリ・オペラ座バレエ学校」École de Danse de l’Opéra de Parisのレッスンの光景が色々と見ることができますが、先生が細くて長い棒を持っていることがあります。棒は、元々の起源を辿れば叩くための棒でもあったかもしれませんし、訓練あるいは調教の様なものを表していたのかもしれませんが、ここでは権威をあらわしています。伝統を引き継がせるための権威の棒です。軍の最高司令官である王がもつ指揮棒、オーケストラの指揮者が持つ指揮棒は、指示命令系統の頂点に立つものとしての権威をあらわしています。ただこの先生が持っている棒は特大級です。これはある種、絶対的な権威とまではいわないけれども、強力な権威であります。バレエ界は民主的とは言いがたく、上意下達型が多いです。
また当時のバレエ界は今と違ってまだかなり雑然とした様子です。もちろんダンスの基本は変わらないでしょうが、今とはずいぶん異なっていたでしょう。先生がじっと見つめているバレリーナが踊っているのは、おそらくアチチュード(piqué attitude)でしょうが、現代のものとは少し違います。つまり、手や腕の作り方、首の反らしかた、どことなく肩が少し上がった感じがするところなど、いかにも古い印象がする踊りです。今ほど洗練された美しさがありません。
バレエの発展途上にある、雑然とした練習場での光景です。泥臭い雰囲気と美しさが混じりあっています。
(The Metropolitan Museum of Art, 2018)
パステル画
時間と空間を切り取るドガの巧みさをとりわけよく表している作品の一つです。何気なくて、また何であるのかわらないにしても、二人の女性の関係性を描いています。この二人には何か濃密な関係性があるようです。そしてまた女性性を描いています。
パステル画で柔らかく、巧みで美しい表現です。またこの絵全体では、光と陰の効果(特に顔の陰)を描くことが制作上の重要なモチベーションにもなっているようです。
(The Metropolitan Museum of Art, 2018)
1890年
鮮やかな色彩です。油彩ですが、顔料は何を使っているのでしょうか。油彩でもパステル調ですが、パステルを粉にして油に溶かしているのでしょうか。顔料をよく吟味しているでしょう。
ドガの晩年の作品です。視力が衰えていたとのことです。
鮮やかで、こなれた描きぶりです。
上の写真はメトロポリタン美術館からのものですが、本物以上によいものに見えたりもします。
(メトロポリタン美術館展 国立新美術館 2022年2月~)