表参道ソフィアクリニック
1840年ボルドー
1916年没 96歳
1894年 デュラン=リュエル画廊に出品。その後、ほとんどモノクロームの作品は無くなったようです。
ルドンは解説がないと、わかりづらいところがあります。
三菱一号館 2018年
【ジェロームのところでの修業と自分の道の発見】
ルドンは、アカデミズムの巨匠ジェロームのところでの絵画修業を行いましたが、1894年の画家の記述によると、この修業の頃の苦痛の経験ののちに、想像上のものを創造しようという感覚に襲われた、と言います。
【花瓶の生け花】
ルドンは、初期から晩年に至るまで、花瓶の生け花を描いてきました。晩年には特に制作点数が増えています。全部で80点を数えるとのこと。
【抽象表現主義の前駆として】
20世紀の前衛あるいは抽象表現主義の手前にもあるような作品群を描く画家の一人として位置づけることができます。
【天体望遠鏡】
19世紀には天体望遠鏡が飛躍的に発展しました。それもあって、宇宙への関心が高まりました。宇宙の驚異が伝わってきたことでしょう。宇宙人について想いを馳せることもあったかもしれません。そしてミクロコスモスとマクロコスモスの照応関係についての思想も触発されたかもしれません。
【象徴主義】
彼は美術史の中で一般に象徴主義としても位置付けられています。象徴主義に分類される画家や作家は多くいます。また象徴主義と一括りにできないほど多様であると思われます。しかし彼は特に象徴主義の代表格の一人です。モーリス・ドニは、彼のことを、若き象徴主義世代の理想であったと位置付けています。
【クラヴォーという人物との出会い】
1857年17歳の頃にくらヴォーという男と知り合いになりました。ルドンは彼から科学、文学、哲学などを教えられました。
油彩/カンヴァス 65.0×46.0 cm 岐阜県美術館 Mystical Conversation Entretien mystique vers 1896 Huile sur toile The Museum of Fine Arts, Gifu
この作品にはルドン自身の文章があります。
・赤い小枝のついた枝を持つ。
・不思議な花々が足元で夢を見ている。
・黄色と紫色の女性が話しかける。
・日本の円柱がバラ色の雲の浮かぶ青空を切り取る。
解説によれば、この場面は、聖母が洗礼者ヨハネの母親を訪れる「御訪問」のシーンと考えられる事もあるとのこと。あるいは当時流行していた神秘主義の文脈での、秘密の教義が、次の世代へ受け継がれる場面であるという解釈もあるとのこと。
好ましい美しい色彩です。
油彩/カンヴァス 65.0×50.0 cm 岐阜県美術館
Huile sur toile
The Museum of Fine Arts, Gifu
今回のルドン展(2018年)のパンフやチケットのデザインにもなっていた作品です。植物的世界と融合する女性です。これは夢の世界と必ずしも言い切れません。これもルドンの「植物人間」の一つでしょうか。とても美しい花々です。
1900−1901年
ドムシー男爵の食堂装飾 Decorating the Dining Room at Château de Domecy Les décors de la salle à manger du baron de Domecy
それまで小品しか描いたことのないルドンにドムシー男爵からシャトーの食堂の壁の装飾がを依頼されました。その絵画群の中でグラン・ブーケが最も重要です。
それ以外の作品群は、なるほど少し今一つだという印象もなくもありません。総じて、新鮮さとともに、戸惑い、そして整理されていない感じです。しかし、見ていると、どことなく見入るところがあります。なかなかの壮観です。神秘的な雰囲気で美しいです。形象には有機的な特徴があります。植物的なものと動物的なものの融合。蛾または蝶(フランスでは蛾と蝶をあまり区別しません)は、花の形に似ています。動植物は融合する傾向しています。蛾や蝶は魂と死の象徴のようです。独特の世界観の雰囲気に絵画全体に満ちているものです。
しみじみとしたようなファンタスティックな雰囲気の世界であり、ずっと佇んで見入っていたくなります。嫌味がありません。
彼が絵画修業したアカデミズムのジェロームとは真逆の絵です。
壁画群の中ではひときわ映えるものだったでしょう。
豪華で堂々としています。特に見栄えがする色彩が多く、美しいです。比較的落ち着いた色合いの壁画群の中で、ひときわ色彩が鮮やかで際立っています。
油彩/カンヴァス 50.0×73.5 cm 岐阜県美術館
The Death of Orpheus La mort d’Orphée
vers 1905-1910
Huile sur toile
The Museum of Fine Arts, Gifu
オルフェウスは女たちに八つ裂きにされて殺されました。彼の首は竪琴に乗せられ、海に流され、レスポス島へとたどり着きました。この作品は流れ着いた首と竪琴です。彼の調べと歌は動物植物を魅了しました。
1914年 キュプロス
キュプロスは一つ目の巨人です。彼はニンフのガラテアに恋をして、岩陰から、彼女の寝姿を覗いています。彼の目はこちらを見ているようで、ガラテアにうっとりして、そして恥ずかしそうに、その表情をこちらに向けているのでしょう。後に、彼はガラテアノ恋人を殺してしまいます。
ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント 2021年12月 東京都美術館