表参道ソフィアクリニック
1599 - 1641年
1620 - 21
自画像
若き日のヴァン・ダイクの自画像です。21、2歳頃です。くだけた感じで、お洒落で、粋で、闊達です。女性的な唇や手指であり、総じて女性的なニュアンスを漂わせています。口紅をさしているようです。彼は何の表情を浮かべているのでしょうか。何を思っているのでしょうか。
(メトロポリタン美術館2018年)
20歳ごろの作品です。アントワープにて描かれました。背景はスナイデルスの領地だとのこと。充実の構図です。
1579年生まれの、フランドルの動物画及び静物画の画家です。ダイクの友人ですが、ダイクより20歳くらい年上です。当時からすれば、先輩や兄のようというよりは、父親と子供くらいの年齢差です。ダイクはスナイデルスを幾度か描いています。
夫と妻の肖像画を並べえると、背景のカーテンは、安定構図であるピラミッド型あるいはアーチ型になています。
妻より、夫のFrans Snydersの方をカッコよく粋に描いています。ダイクは、夫婦像を描くときには夫の方をカッコよく立派に描きます。
(Frick Collection 2018)
下はスナイデルスの作品です。
Equestrian Portrait of Emperor CharlesⅤ
1621-1627
ヴァン・ダイクもカール5世を描いていたんですね。ただ、カール5世の生没年は1500-1558年ですから、大分年月がたってから描いた作品です。
作品としてはあまりピンとくるものではありませんでした。依頼されて制作されたのでしょう。ちょっといまいちです。
ウフィツィ2019.4
上の2点は、夫婦の肖像としてペアになっています。
ヴァン・ダイクによって描かれた最上の肖像画の一つです。
夫の肖像は、 堂々としていて、それでいて力みなくゆとりがあり、落ち着いています。犬は主人のほうを見上げ、定番通り、忠誠を表わしています。この男性の顔と手の描写が見事です。この人物の性格と同様に、全体にバランスのとれた作品です。
妻の肖像は、夫の肖像よりもやや縮こまった印象もありますが、見事な描き振りです。また夫の犬が大型で力強く賢く活発そうで運動性能が高そうであるのに対して、妻の犬は貧相なまでにチンチクリンです。それだけ忠誠の度合いが低いということでしょうか。
(ウォーレスコレクション2018年1月)
とても優れた肖像画です。特に顔が生々しいリアリティがあります。顔色は青白く、まさに青味がかかっています。目の描写が素晴らしいです。目はとても綺麗に澄んでいます。落ち着いてはいますが、しかし何か息を詰めたような緊張というか、硬さが見られます。実直そうです。このように特に顔の描写が優れています。何か大きな事件も乗り越えたかのような雰囲気にも見えます。
この人物はフェリペ4世の家臣として活躍しました。聡明にして穏やからしい性格、そして賢明。忠実にして誠実。意思が強そう。
国立西洋美術館プラド美術館展2018年
Equestrian Portrait of Charles I
なぜかしら馬の頭部が不自然に小さいことに目がいきます。頭が小さすぎて立派さを損なっています。それ以外の馬の体の描写は別に悪くないのですが、しかし足も細すぎて少し貧相に見えます。
それに対して意気軒昂としたチャールズ1世。彼がはるかかなたを見つめているのは、彼が広いパースペクティブを持って物事を見るということです。しかし実際はどうなのでしょうか。
表情の描写はいいにしても、それ以外のところは、時の権力者である王を描くのに、なぜかしら描き方がどこも少し雑でチグハグな感じがします。
しかしチャールズ1世は自身の命があと10年ちょっとしかない(つまり1649年に処刑される)ことにはまるで気が付いていないのは当然と言えば当然ですが、この絵画の画面の全体やあちこちの諸部分のチグハグ感は、なんとなくこの王の政権基盤の不安定さを反映しているようにも思われます。
1641
生き生きとして描かれています。チャールズ1世のぎごちなさとは対照的です。明るく聡明な人柄がうかがわれます。これもまたヴァン・ダイクの代表作の一つでしょう。
ピッティ宮殿2019.5