表参道ソフィアクリニック
中央の眼光鋭い男は何?
良くも悪くもない世界、中間的な世界像です。そしてまとまりがありません。でもいい絵です。人々の配置が充実しています。絵全体としては虚しさと充実が両義的です。
輪郭はかなり太い線です。
鋭い目つき で何を見ているのでしょうか。荒々しい手つき、荒々しい色と形。暗い雰囲気です。暗くて暴力的。力強いタッチ。力強い人間。暴力的で荒々しい人間です。
カッコいいです。
(Neue Galerie 2018)
1938年
Birds Hell
死の鳥が人間たちを拷問しています。この鳥たちは、もはやいかなる人間性も失った(というか元から持ち合わせない)者共。しかし、このような人間たちが跋扈できる社会のあり方もあり得ます。この絵の背景には、「ハイル・ヒトラー!(ヒトラー万歳!)」をやっている者たちがいます。新たに卵から孵化した奇妙な存在。孵化してすぐさま「ハイル・ヒトラー!」をやっています。こいつは民衆に呼応して産まれた怪物です。そして栄養分を与える乳房が四つついています。史上最大の暴力集団がこれでしょうか。激烈な絵です。ピカソのゲルニカよりもっと直接的で倒錯的な作品です。
民衆が暴力集団になると優しい感情は失われ、歴史的巡り合わせによって、倒錯者集団が跋扈するようにもなります。今でいうサイコパスは通常は単独で行動することが多いですが、それが徒党を組むと、空恐ろしいことになります。このような輩は、やがては滅びたり散り散りになる運命にあるにしても、一時的に歴史の表舞台に立つことがあります。彼らは、どれほど人々を傷つけ苦しめるのでしょうか。
しかしこのような集団が跋扈するのは、人々が理想を目指す甘美な夢を持っている時なのです。極めて驚くべき衝撃的な逆説です。